2017.05.31更新
2018年卒採用活動もいよいよ選考解禁日が迫ってきており、経団連指針を順守する企業様にとっては、6月1日に向けた事前準備に追われる毎日ではないでしょうか。それに合わせて、学生を送り出す大学側の準備も佳境に入ってきております。
年々就活の決着時期が早まってきている大学側の状況はどうなのでしょうか。首都圏の大学キャリアセンター様へ訪問する機会があり、主に内定者フォローについてヒアリングしたところ、「保護者からの相談」に悩まされているとの声がありました。
<保護者からの相談>
「内定先からFacebookグループへの参加を指示されて企業コンプライアンスに不安を憶えます。」
「内定先から連絡はLINEで取るのでIDを教えるよう言われているけれども、個人アカウントのアプリを使って大丈夫なのでしょうか。」
なぜこのような不安を保護者の方が抱くのでしょうか。保護者と子供である内定者の会話からヒントを探りたいと思います。
※ 採用担当者(採)、内定者(内)、保護者(父・母)、大学キャリアセンター(大学)
採「内定おめでとう!今後の予定はLINEで連絡するね!IDを教えて貰っていい?」
内「はい!IDは●●●●です。 よろしくお願いします!」
内定者は「LINE ID教えて良かったのかな・・・。 まだ他の会社も受けているし、そもそも会社とLINEでやり取りするなんて嫌だなぁ・・・」と不意に漠然とした不安に襲われます。帰宅後、家族との会話の中でその不安は的中します。
父「無事に内定を取れて良かったな!今後の予定はどうなっている?父さんの会社だと内定式前にも懇親会があったり、よく内定者が集まっているよ!」
内「今後の予定はLINEで送られてくるんだって!きっと内定式前に集まると思う!」
父「LINEで連絡? LINE交換したの?」
内「うん!」
父「会社とのやり取りをLINEでやるなんて聞いたことないぞ!」
内「みんな登録してるから大丈夫!って人事の人が言ってたよ!」
父「本当か?内定者とはいえ、まだ社外の人だぞ。社外の人と社内情報をLINEでやり取りするなんて、その会社大丈夫なのか?」
内「どうして?みんなやってるって・・・」
父「会社には個人情報保護や情報セキュリティを管理する為の部門があるんだよ。法令を順守するためにコンプライアンスを強化する監査部門もある。セキュリティ担当部門からすると、無料SNSアプリを使って内定者へのコミュニケーションを許可するのは難しいと思うぞ。万が一、採用担当者が勝手にやっているとなれば、コンプライアンス違反になってしまう。担当者の方はどういう説明をしていたんだ?」
内「詳しくは説明を受けてないからわからないけど、他の会社でもやってるみたいだから大丈夫だと思うよ。」
父「うーん。父さんの会社が厳しいだけなのかなぁ。」
父親が大企業に勤めているほど、コンプライアンスには敏感になります。そして学生である子供は、社内コンプライアンスに関して詳しく知らないため、返答も曖昧になりがちです。就活の目的は内定を取る事ですから、そこまで気にしている学生は多くありません。
そのため、翌日になり母親からキャリアセンターに連絡が入るケースが増えているそうです。
母「息子が内定をもらった会社からLINEのIDを教えるように言われました。LINE IDを教えないと内定を取り消されるのでしょうか?主人の会社では、内定者フォローで個人情報の提供を強要することはあり得ないと・・・」
大学「企業様へ確認させていただきます」
このようにして、大学キャリアセンター様から内定先企業様へ連絡が入るという事でした。場合によっては、保護者から企業へ直接相談が入るケースもありますが、子供の印象を悪化させない為、大学キャリアセンター様を経由する場合が多いそうです。
今回訪問した5大学のうち、4大学で同様のケースを伺いました。
ある企業の採用担当者は、
「確かに、このようなトラブルはある程度予想できます。保護者の方が子供の内定先に干渉してくるケースが増えているからです。4~5年前から内定者フォローにFacebookやLINEなどを内定者フォローに導入する企業は増えていました。一般消費者を顧客とするBtoC企業であれば、採用活動を広報活動と位置づけ、FacebookやLINEを通じた情報発信に取り組んでいるところもあります。
しかし、学生個人とのやり取りは採用管理サイトやリクナビ・マイナビといった就職サイトで展開しており、従来、内定者と連絡を取り合うためには、電話やメールが中心でしたが、利便性を優先し無料で利用できるFacebookやLINEを通じた情報共有が急増してきました。FacebookやLINEで採用広報を行っている企業が増えていることで、採用担当者にとっては、抵抗感無く取り入れることができたのでしょう。
しかし2~3年ほど前から状況が変わってきました。採用担当者の設定ミスにより、内定者情報が見える状態になってしまったトラブル事例が相次いで報告されているためです。」
「非公開」のはずなのに……Facebookで内定者リストがダダ漏れ? 公開範囲設定に注意を(ITmedia NEWS)
さらに個人情報漏洩事件はメディアで大々的に取り上げられるトピックとなり、社内でも情報管理の徹底がより求められるようになってきました。そのため、情報システム部門やコンプライアンス監査部門からの指摘を受け、FacebookやLINEを利用した内定者フォローが展開できなくなった会社が出てきました。情報システム部門に多数の人員を割けない中小企業でも、採用実務担当者の判断でFacebookやLINEを使った内定者フォローを展開していましたがコンプライアンスを意識する経営側からストップが掛かるケースもあります。
内定者にとっては違和感のないFacebookやLINEも、社会人である保護者からすると「うちの会社では違うんだけどなぁ」となるのは、このような社会背景も関係しているのではないでしょうか。
採用実務担当者の繁忙期時は、実務タスクが山積みで、他社情報に触れる機会がそれほど多くありません。コンプライアンスに違反している意識は全く無い中で、前年踏襲でFacebookやLINEを使った内定者フォローを始めているケースが多いですが、年々強化される個人情報保護や情報セキュリティ・コンプライアンスに対して、より適切な対応が求められてきております。
昨年踏襲ではなく、もう一度内定者フォローの取り組みを見直される機会を設けてみてはいかがでしょうか。
私たちEDGEでは、限られた予算と人員で最大限内定者フォローの効果を高める事例、ノウハウを人事担当者へご提供させて頂いております。。